奈良県支部
【第4日目:8月14日】

 ☆ チェンナイ最終ショッピング

いよいよ、チェンナイ最終日。今夜23時にはチェンナイ空港から日本への中継地シンガポールへ発たねばなりません。
まだ、3日足らずなのに、この雑多で埃っぽいチェンナイで1ヶ月ぐらい滞在しているような感覚に見舞われます。チェンナイという街を楽しみ、とけ込み、ついには

強い愛着を覚えるまでになりました。

さて、午前中は買い残した品物のショッピングです。
T・ナガール地区のスペンサープラザで、おじゃまんは極上のクルタを購入せねばなりません。白のクルタは持っていますが、今回は黒のクルタを購入しようと思います。黒のクルタを着こなし、グッと引き締まった自分がイメージされ、自然と頬がゆるんできます。
アルナチャラホテル前に待機した専属リクシャーでは、今日も元気な笑顔でスグマールさんが待ちかまえてくれてます。

「オジャマー!」と手を大きく振り上げて迎えるスグマールさん。
「スグマー!」と、負けぬぐらい手を振りそれに応えるおじゃまん。
二人の間には、前世での兄弟であったかのような血の通いが感じられます。

リクシャー・ワーラー、スグマール。奥さんと二人の小さな子供を抱えた一家の大黒柱。家族のため、バイタリティーあふれる笑顔と機敏な動作で懸命に仕事に精出すリトル・マニカムです。決して、楽な生活ではないでしょう。日々の生活に追われているかも知れません。でも、男スグマールには極貧の生活さえも笑い飛ばす度量と器量が感じられます。

スグマールさんの運転ぶりは実に機敏です。非常に高度な運転技術を持っており、他のどのリクシャー・ワーラーよりも切れ味の鋭い運転を見せつけてくれます。
運転中は、トレードマークの笑顔が消え、周囲の交通状況を鋭敏に把握しようとする真剣な表情に変わります。小柄ながら幅の広い大きな背中が頼もしく、この背中と肩に家族の全生活がかかっているのだという存在感。いわゆる、オヤジの背中の典型を見る思いがします。
スグマールさんの少し汗のしみ出たリクシャー・スーツの背中を見て感慨にふけっていると、早くもスペンサープラザに到着していました。

プラザ内では、それぞれの欲しいものを買うため、集合時間と場所がてつのすけさんから指示されて、メンバーはクモの子散らすように解散していきました。
おじゃまんは、すぐに店内1階のクルタ販売店に飛び込み、黒系統のクルタ数種類を見せてもらい、十分に吟味してもっとも気に入った2着を購入しました。高級品は値段が張ります。お財布が一挙に薄っぺらくなってしまいました。究極の買い物を済ますと余裕が出て、あとはプラザ内を悠々と見て回りました。

ほぼ集合時間どおりにメンバーが集まり、これから昼食です。

 ☆ 久しぶりの日本料理

てつのすけさんが連れて行ってくれたところは、何と和食専門店です。
店名は「天竺牡丹」。厨房には日本人の旦那様。店内を仕切るのは日本語ペラペラのタミル人の奥さんです。チェンナイの日本料理店は、この「天竺牡丹」と例の「赤坂」の2店しかありません。

日本を発って、まだ4日しか経っていないというのに、

日本食が実に懐かしく感じられました。

てつのすけさんの綿密な行動スケジュールは、実質3日のチェンナイ観光を1ヶ月にも感じさせてくれる充実したものでした。

おじゃまんは、丼物と熱いうどんを注文。ひとときの「日本」を味わいました。

 ☆ 現地の映画館

メンバーは、スペンサープラザでの大量の買い物を抱えているため、一端ホテルに戻り、荷物を部屋に置いて、しばし休憩の後、現地の映画館に向かいます。

ラジニカーントの作品は、あいにくどの劇場でも上映されておらず、他の映画で我慢することになりました。

ホテル前に待機中のオートリクシャー、当然スグマールさんの笑顔と元気な「オジャマー!」という声を期待しておりましたが、スグマールさんがいません。何と、家に食事に帰っているとのこと。タイミングが狂ってしまったようです。他にもう一台専属だったリクシャーがいません。

通りかかった別のオートリクシャー2台を急遽を呼び止め、出発することになりました。また後で、すぐにスグマールさんの元気な顔が見られることでしょう。

何という名前か知りませんが、大きな劇場に到着しました。劇場前には人があふれています。ごった返していると表現した方が当たっているかも知れません。
メンバーは、当然劇場前でオートリクシャーを降りると思っていましたが、何とオートリクシャーは我々を乗せたまま、ごった返す人並みに突っ込んで行くのです。4台のオートリクシャーがジワリジワリと人並みを押しのけるようにかき分けて進んで行くと、劇場敷地内に駐車場があったのでした。

リクシャーから降りて、てつのすけさんとマダンさんが相談しています。

その間にエミリンさんが、素晴らしくカッコイイ男の子に話しかけられました。その男の子は、まだ20歳前後で、身長は軽く180センチを超えています。小顔でスラリとした体型、顔はそのまま映画の主役を張れるほどの美男子です。可愛い男の子大好き人間のエミリンさん、超ゴキゲンになりました。

しばらく美青年とタミル語で和気藹々のやりとりしていたエミリンさん。
満を持して、その青年に一緒に写真を撮ろうと誘いました。ところが、その青年、罰当たりにも日本の誇る天下の美女エミリンさんの誘いを無碍に断ったのであります。う〜ん、何たることをサンタルチヤ!
身の程知らずにも限度があります。なんと、その青年、横にいた友人と共にさっさと立ち去ってしまいました。

エミリンさん、目が点になり、額に斜線の陰がかかり、言いしれぬほどの深いショックが隠し切れません。エミリンさんの誘いを断る男など、エミリンさんの生涯で、未だかつて、ただの一人もいなかったのです。

エミリンさんのプライドが
音を立てて崩れていくのが
ハッキリ聞こえました。

それでなくても色白のエミリンさん、顔面蒼白で、それをさらに漂白剤で仕上げたように真っ白に見えます。たぶん、頭の中も真っ白になっていたことでしょう。ご愁傷さまです。アーメン♪

マダンさんと相談していたてつのすけさんが、メンバーに言いました。
この映画館よりも、他の映画館で今タミルナンバルワンの人気映画を上映しており、それを見に行くとのことです。

次に到着した劇場前は、それほどの混雑ぶりでもありません。今、まさにその映画の上映が開始されたとのこと。あわてて劇場内に入ります。館内はすでに真っ暗で、スクリーンいっぱいに、ヴィジャイという若手スターの顔が映り、カバディというスポーツのスター選手を演じています。

場内誘導の人に案内され、館内中央部分の席を通路をはさんでメンバーが二手に別れて座り、映画の鑑賞に入ります。おじゃまんは、スクリーンに向かい、中央通路をはさんで右手の席に座りました。劇場の壁際です。右に一つ空席があります。そして、左の席にきえちゃん、さらにその左にリーさんが座っています。

映画は、か弱い美人ヒロインと彼女を狙う極悪非道なアンチヒーロー、そして彼女を救い大活躍するヒーロー(ヴィジャイ)の三つどもえの痛快アクション娯楽大作です。毎度のこととはいえ、手に汗握る善と悪の攻防、ビートの効いた現代的な音楽、そしてキレの良いダンスシーンがたまりません。

インターミッションです。場内が明るくなりました。やっと、この映画館の状態がわかりました。暗がりでは快適だったのに、明かりがついてみると案外古ぼけた映画館です。きえちゃんとリーさんがトイレに立ちました。ふと、横の壁を見ると、な、な、何と

ゴキブリがウジャウジャ
這ってるではありませんか。

背筋に冷たいものが走りました。そう言えば映画鑑賞中から足下もゴソゴソする気がしていたのです。ゴキブリは小さめの人畜無害のヤツですが、一挙に気持ちが萎えてしまいました。
壁にひっつくようにして座っているインド人は、まったく気にしてません。映画館と厨房にゴキブリがいるのは、いたって自然なことだと言わんばかりに冷静なのです。タミル人が偉大な民族に感じられました。

インターミッション終了。場内の明かりが消え、ちょっとホッとしました。映画は後半、いよいよヒーローヴィジャイの活躍も絶頂を迎えます。
場内のインド人はツボを心得ており、ヤジを飛ばしたり、拍手したり、スクリーンと一体になって無我夢中であります。確かに面白い映画ですが、面白さ半分、ゴキブリ怖さ半分で違う意味でスリルを感じました。

映画も大団円を迎え、場内割れんばかりの拍手喝采、口笛と共に明かりがつきました。なぜか、違う意味でホッとしたおじゃまんでした。

逃げるように中央通路に出ます。逃げるように館内からフロアに出ます。

メンバーみんな、映画の余韻を残して顔が輝いています。ゴキブリのことなど口が裂けても言えません。取りあえず、トイレに走り、出すものを出して、メンバーみんなで劇場の外へ出ました。心底、ホッとしました。劇場を出てから、初めてこの映画の題名が「ギッリ(Gilli)」であることを知りました。ある意味、生涯忘れられぬ映画鑑賞となりました。いゃ〜、映画ってホントに面白いですね。

いゃ〜、現地の劇場って
ホントにスゴイですね。(爆汗)

つづく...


1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11

もどる