奈良県支部
【第5日目:8月15日】

 ☆ チェンナイ空港〜チャンギ空港:恐怖の蒸し風呂旅客機

午前0時発のシンガポール航空機(SQ409便)に乗り込み、一端シンガポールでトランジットの後、いよいよ日本へ帰国します。

飛行機の中は蒸し暑く、座席に着いても汗が噴き出してきます。
なんで、こんなに暑いのか、

エアコンがまったく効いてません。


なかなか出発しません。どうしたのでしょう。不安になりながらも、疲れからかウトウトし始めました。
首すじから胸にかけて、タラリタラリとしたたる汗の不快感で目が覚めました。時計を見るともう午前1時です。まだ、出発の気配なし。もう一時間も出発が遅れています。

てつのすけさんが言うには、電気系統の故障で出発が遅れているとのこと。機内アナウンスがほとんどありません。あっても、英語が理解できないので意味不明のおじゃまんです。
機内温度は、さらに上昇。ついに、どこかで赤ちゃんが泣き始めました。
白人の中年男性がスチュワーデスに詰めより強い口調で講義しています。
スチュワーデスがこわばった笑顔で必死に言い訳しております。
その直後、ジェットエンジンの音がひときわ甲高くなったと思ったら、機体がゆっくり動き始めました。機内にワーッと歓声が上がりました。
低温サウナのような機内で、インド人も日本人も白人も黒人も猫も杓子もジーッと我慢していたのです。

ジェットコースターのような加速から、ゆっくりと機体が地上を離れます。機首をもたげ、上り坂のスロープのようになった機内にホッと安堵の雰囲気が満ちあふれました。
徐々にエアコンが効いてきます。また、疲れが押し寄せ、まぶたがゆっくり降りていきました。

しばらく眠って急に便意を催し、目が覚めました。機内は、ほとんどの乗客が眠り込んでいます。今なら行列せずにトイレに入れると思い、隣のランガを揺り起こしてスペースをあけ、通路に出ました。

案の定、トイレはガラガラです。パスボートやお金が入った命の次に大切なウエストポーチを腰からはずし、トイレ内の蛇口コックに引っかけて、必死におきばりやしたのおじゃまんです。水洗だと思い、コックをひねるとドバーッ、シュポポポーッと猛烈な空気圧で排泄物が吸い込まれて行きます。もうちょっとで、自分自身が尻から吸い込まれる錯覚に襲われ、壁の手すりを必死に掴もうともがくおじゃまんでした。

はぁ〜〜、怖かったぁ♪

座席に戻って、また眠っていると、急に肩を揺り動かす者がいます。
安眠を妨害され、ムッとしながら顔を上げると、怖い顔のランガが何かを目の前にブラブラさせました。な、何と!ウエストポーチではありませんか!しまった。トイレの中に忘れていたのでした。
ランガが言うには、私のあと、何人かトイレに入ったようです。白人の男性がトイレから出て、キョロキョロしていたそうです。スチュワーデスを探しているように見えたとのこと。しかし、その男性はあきらめて自分の席に戻って行きました。

次に、ランガがトイレに入ってみると、見慣れたウエストポーチが蛇口コックに引っかかったままになっています。あわてて中身を調べてみると、ふざけた表情の男の写真を貼った日本国発行のパスポートが出てきたそうです。まぎれもありません。自分の亭主で、臆面もなくムットゥ進と名乗る奈良支部長こと、おじゃまん本人のパスポートだったのです。
ランガの手からウエストポーチをひったくるなり、急いで中身を調べましたが、すべてそろっています。
まさに、

キンタマが
縮み上がる思いでした。

しっかり、腰に装着して、ランガの刺すような目つきを体かわししながら、またもや眠りに落ちたのです。

しばらくすると、また目が覚めました。飛行機は快調にシンガポールに向かっているようです。またもや、便意を催しはじめました。
ランガを揺り起こし、「もう、忘れなや!」という罵声を浴びながら、トイレに入りました。

もう、金輪際ウエストポーチをを忘れるワケには参りません。
腰からウエストポーチをはずすやいなや、首にひっかけました。
これなら、もう体と一体やがな。我ながら、完璧な安全策に鼻高々になってしまいました。
しかし、こうしてウエストポーチを首にひっかけ、便器に座っている自分を想像すると、まるで「東京ぼんた」やな。と、一人クククと笑ってしまいました。

 ☆ シンガポール一日観光

朝7時、メンバーを乗せたシンガポール航空機は無事チャンギ国際空港に到着しました。

ここでのトランジットは17時間あります。この時間を利用してシンガボール市内観光をするとのこと。なんだか、得した気分のメンバーです。
空港から、一端外へ出て、MRTという地下鉄に乗り、リトルインディア駅まで行きます。

MRTは、途中地上へ出て、さらに高架を走ります。高架から見るシンガボールの街並みの美しいこと!緑の中に近代的な超高層ビルが建ち並び、住宅街はまるでおとぎの国のようです。
シンガボールの人工的な美しさと比べると、チェンナイの飾り気のない埃っぽい空気と生きることに精一杯の人々が別世界のように感じられます。しかし、この人工的な美しさは反面、人工的ゆえの冷たさも感じさせます。カーストなどない地上の楽園のようですが、すべてを美しさで包み込む裏には、それに見合うだけのダーティさが隠れているのかも知れません。内も外も飾らず、飾る余裕すらないチェンナイの人々の日々の暮らしぶりに血の通った人間らしさを感じながら、MRTの車窓から東南アジア最大の経済・文化・観光都市をながめて、何やら複雑な気持ちになるのでした。

リトルインディア駅に到着すると、メンバーは地下から地上に出ました。

駅の近くの食堂街のテーブルに座り、一息つきます。その間に、てつのすけさんとえびちりちゃんがホテルを確保しに行きました。高齢者グループを引率するため、飛び回るてつのすけさんたちです。誠に、ありがたいことです。
食堂街で座っていると、エミリンさんときえちゃんが珍しいくだものを買ってきました。マンゴスチンです。マンゴーがくだものの王女と例えられるなら、マンゴスチンはくだものの女王と讃えられています。
その独特の酸味のある風味は、やはり女王の名にふさわしい高貴なものでした。日本では、なかなかお目にかかれないマンゴスチン。実は、おじゃまんは生まれて初めてマンゴスチンを食べたのでした。

そうこうしていると、てつのすけさんが戻ってきました。ホテルの部屋を確保できたようです。
食堂街から歩いて数分のところにシャレたシティホテルがありました。
オートリクシャーに乗った3人づつの組がホテルの各部屋へ向かいます。
部屋で、各自しばし休憩です。部屋のテレビではアテネオリンピックの真っ最中でした。

休憩の後、マイクロバスで昼食に出かけます。
まさに、行列のできる中華料理店に行列し、テーブルが空くと数名ずつ店内に入り店が勧める名物料理を堪能しました。なんぼでも食べられるんです。どのメニューも絶品でした。

食後、中華料理店の並びにあるお茶の店に入りました。店の3階まで上がり、若い男性店員さんの見事な手さばきでお茶を入れてもらいました。
日本で言う茶道のように中国にも「煎茶」という茶道があります。今回本場の「煎茶」のしきたり、テクニックをまざまざと見ることができました。貴重な経験をさせてもらいました。

「煎茶」の店から出て、タクシーを拾い、いよいよ市内観光のメインです。タクシーは、バラバラにやってくるので、てつのすけさんとえびちりちゃん、そしておじゃまんが最後のタクシーに乗ることになりました。
先発の2台のタクシーの運転手には、てつのすけさんが目的地をしっかり伝えていたにもかかわらず、目的地に着くと先発タクシーの姿はどこにもありません。付近を探し回りましたが、どうしても見つかりません。
こんなところで、メンバーがはぐれてしまうなんて、何という誤算でしょう。てつのすけさんもえびちりちゃんもおじゃまんも顔面蒼白状態です。えびちりちゃんを待たせて、てつのすけさんとおじゃまんで付近を手分けして別々にしらみつぶしに探し回りました。おじゃまんも、慣れぬシンガボールで人捜しをするなんて、予想もせぬ事態です。人を捜すことよりも、今度は自分が道に迷わぬように、ある面、必死です。

とうとう見つけられず、とりあえずえびちりちゃんの待つ場所に戻ることにしました。しかし、戻り道があやふやです。今度は自分が迷子になるのなかぁ、と背筋にびっしょり汗をかきながら歩いていると、突然見覚えのある場所に出ました。駆け足気味にえびちりちゃんのいる場所に向かうと、何と!

はぐれてしまったメンバー全員が
そろっているではありませんか。

みんなで、おじゃまんを待っているという逆転シーンです。

捜索に時間がかかって、市内観光は断念することになりましたが、メンバーがはぐれるという緊急事態に、市内観光など問題にならないぐらいのスリルとサスペンスを味わうことができ、これはこれで面白い経験となりました。

タクシーを拾い、ホテルまで戻ります。

しばし休憩して、リトルインディアに買い物に出ます。すでに夜です。
ラジニ作品、その他ポスターやらCD、DVDなどをどっさり買い込むメンバーは、ショップにとって天から降ってわいたような上客となりました。

リトルインディアの街並みは、まさにインドそのもの。日曜日の夜ということで、シンガポール中のインド人が集まってきているようで、交通ルールなんてない、まるでチェンナイに逆戻りしたかのような錯覚を覚え、妙に懐かしいひとときを堪能しました。

買い物を終え、マイクロバスで空港に向かいます。

空港に入る際、税関職員みたいな若い男性が、誰かのラジニTシャツを見て大興奮。

この青年はラジニカーントの
大ファンだったようです。


近くにいる同僚を呼び寄せ、大騒ぎです。一般の客が話しかけますが、まるで相手にしません。もう、私らメンバーに夢中なのです。エミリンさんのふかふかラジニ人形に驚喜するや、きえちゃんが取り出したラジニ特製ケータイに仰天し、一人で歓喜の雄叫びを上げています。
とうとう、私が空港内まで案内します。とか何とか言い出して、メンバーの先頭に立って早足に歩き始めましたが、途中、上司に見つかったようで、照れながら職務に戻っていきました。

搭乗手続きを終え、空港ロビーでコーヒータイムとなりました。
みずさわさんがいません。どこへ行ったのでしょう。仕方がないので、それ以外のメンバーでワイワイ言いながらコーヒーとケーキを楽しみました。

談笑の中で、エミリンさんのご主人の信じられない話を聞きました。
エミリンさんが結婚して10年間、ご主人にはパンツ2枚しか買ってあげなかったそうです。
10年でパンツ2枚ということは、

1枚のパンツを5年間も
はき続けたことになります。

リーさんがそのパンツをどういう状況か知りませんが見かけたことがあるそうです。尻の部分がすり切れた、それは惨めなパンツだったそうです。エミリンさんもエミリンさんならば、ご主人もご主人です。パンツぐらい自分で買ってはけば良いものを、エミリンさんが買ってくれたパンツをかたくなにはき続けるとは、一途というか、頑張り屋というか、無頓着と言うか、誠にパンツに関心を示さぬ生き様です。みんなで、笑い転げました。

さぁ、時間が来て、いよいよ日本への旅客機に乗り込みます。シンガポール航空SQ986便です。

機内は、エアコンが行き届いており、今度は快適な空の旅ができそうです。出発は、午前1時10分、日本までの6時間に時差1時間を加えて関空着は午前8時30分ごろとのこと。

機内では、旅の疲れがモロに出て、メンバー全員が熟睡していたようです。あっと、言う間に関空に到着していたのでした。

 ☆ てつのすけさんの驚異的体力

無事関空のロビーに全員集まり、5日間に渡って苦楽を共にしたメンバーもいよいよ解散です。
てつのすけさんは、解散したあと梅田北売店に直行して仕事をするとのこと。奈良支部高齢者メンバーを引率した5日間の疲れをものともせず、仕事に向かうその精神力と体力にメンバー全員目玉が飛び出すほど驚いたことは言うまでもありません。

今回のチェンナイ旅行、てつのすけさんとえびちりちゃんがいなければ旅行なんて呼べない悲惨なドサ回りに終わっていたことでしょう。まず、全員無事に帰国なんて夢のまた夢。マリーナビーチで波にさらわれたり、映画館で行方不明になったり、インドの鉄道から落ちて即死したりの連続で、誰一人生還できなかったに違いありません。そんな意味からも、てつのすけさんは命の恩人でもあるのです。

てつのすけさん、本当にありがとうございました。
奈良支部高齢者メンバーを中心とした参加者全員、このご恩は死んでも忘れません。そして、命をすり減らしてメンバーの命を守ってくださったてつのすけさんとえびちりちゃんの未来に幸多かれと祈ってやみません。

アーメン、ソーメン、味噌ラーメン♪

おしまい♪


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